春に向けて

講習会が終了しました。

今年の春は、なんとも春らしからぬ春で、

小雪どころか大雪の舞う日が続いて、

まさに春の嵐という感じでしたね。

 

南の森校の春はといえば、

嵐はなかったけれども、

新しい生徒や新しい先生を迎え、

春らしい新しさを醸し出しています。

 

教室の中も明るい感じになってきています。

それは新しい生徒とともに歩んでいく雰囲気に包まれているからですが、

他にも教室内を包んでいるものがあります。

 

僕の子ども達も年々成長して大きくなっているのですが、

それに伴って「日本の国」に生まれたことの幸せといいますか、

この国に生まれたことへの幸運と感謝の気持ちがどんどん大きくなっていきます。

 

この国はとても特異な国です。

その特異さは、世界標準とはかけ離れた”標準”を持っていることです。

それは、民族性が生み出した文化という意味ですが、

たとえば3種類の文字を母国語として使いこなす民族はおそらく日本だけでしょう。

その文字を使い、自分たちの感情を表現した文学は、ものすごく高い教養に満ちています。

特にカナ文字が生まれた平安時代から始まり、熟語的漢字を生み出した鎌倉時代を経て、江戸後期の化政文化までに生まれた文学作品は、同じ時期に当時の世界で生まれた小説や物語を見ても突出しています。

 

現在では「古典」といわれるものですが、その作品のほとんどが、日本人の自然に対する憧憬や畏怖を含み、さらに人間の中に棲む善悪の心を時には赤裸々に表現しています。

たとえば、皆さんも知っている「春やあけぼの」の冒頭は四季折々の美しさを表現し、「徒然草」では人間の習性を描き出し、「平家物語」は日本人が大事にすべき心”武士道”を私たちに伝えてくれます。

 

日本に生まれたのに、日本のことをよく知らないのは、なにかとても勿体ないように思います。

かといって、この短い人生で日本国中津々浦々を見て回るのは、ちょっと難しそうなので、

せめて情景でも見たいと思い、教室内を「日本の絶景」写真で彩ろうと思いました。

 

そうした絶景を見て、ここ行きたいなぁと思ったり、行っている自分を想像したり…。

そうしていくことでもきっと想像する力や行動に移る力が養えたらなと思っています。

でも、そんなことよりも、日本の美しさを知りたいし、子ども達にも知ってほしいなと頓に思います。

 

自然に対する畏怖の念、なんとなくひれ伏してしまう想い。

日本人の持つ謙虚さや我慢強さ、協調性というのは、そうした自然への恐れと包まれている喜びから生まれ出でているように思います。

そして、古典の中には、今ほど”文明に囲まれていない”時代の息吹が書かれています。

そうしたものを読んだり、風景を見ることで、情感の豊かさや情緒の深さ、もののあわれ、という日本人特有の「心」を磨いてほしいなと思います。

 

子どもはとても豊かな感受性を持っています。

それは私たち大人にもあるものです。

そして磨かなければ光りません。

 

日本は、人としての心を磨く環境に満ち溢れています。

春はそんなことを感じさせてくれますね。